ユーザーの体験記「パームソナーを使いこなすまで」は、中途失明になった著者が、パームソナーを使いこなしていった体験記pdf(96kB)です。(2007.10.12 )


パームソナーを使いこなすまで

三谷武(愛媛県立松山盲学校の生徒)、和田浩一(愛媛県立松山盲学校の教官)、竹内潔(テイクス社)

 1 目的
 パームソナーを使い始めて3年半がたち、移動だけでなく、体の一部のような”友機”になっています。ところが、そうなるまでは試行錯誤でした。そこで、自分が使いこなしていった過程を分析して、初心者が習得するマニュアルに役立てることを目的にしました。

 2 背景
 パームソナーは、中途失明で全盲になった時、教官の和田から紹介されたものです。和田は長年、白杖の補助として、モーワットセンサ(文献1、2)を使っていました。狭い超音波ビームを振り向けて使う、空中の杖タイプの用具です。ところが、製造中止になったし、もっと小型化を望んでいたので、展示会で知り合った竹内に、開発を持ちかけました。つまり、パームソナーは、モーワットセンサの思想を受け継いで、発展させたものです。
 これは、直ぐに自分の体の一部になって、移動に使えると思ってました。しかし、白杖とパームソナーを交互に気を配って、まるで使えなかったのです。その時は正直、「高い買い物をしてしまったかなあ」と思いました。でも、それは間違いだと思い知らされました。例えば白杖でも、自由に突けるまでには、最低でも半年、大体で1年は必要でした。
 最初から移動に使用するとだめなのです。「物体の有無や形を認識するためのもの」として使ってみると、”白杖の単なる補助”を遥かに凌駕する機械に化けます。そこで、この機械に慣れることから始めました。

 3 習得の過程
 3.1 物体の形が何となく分かるまで
 ●振動の違いが分かる過程;室内に、壁以外の何でもいいので、物体を手を伸ばした距離程度に置き、物体に向けて手を伸ばし、本体を左右に振る。こうすると、振動するところと、振動しないところが、はっきりわかります。この違いが、重要な感覚となります。これで、物体の有無をしっかりと見分けることが可能となります。
 ●物体の位置が分かる過程;三つの物体を、手を伸ばした距離程度に間隔をあけて、並べて置く。左右に振りながら、振動の違いで、物体の位置、特に奥行きを確認する。その物体に触れ、これを繰り返す。こうすると、機械を使う自分の癖をつかめるため、物体の位置を正確に把握できます。
 ●物体の形を捉える過程;室内のあらゆる物体に本体を向け、近づいたり離れたりして振動の違いを確認します。次に、移動する物体を確認、例えば、室内の電灯に垂れ下がる紐を左右に揺らし、その紐に本体を向けます。次に外で、例えば駐車した車や、自転車などの周囲を回ってみます。そうやって1ヶ月が過ぎると、物体の形が、『何となく判る』ようになっていたのです。その感覚は、視覚に障害を持つものにとって、とんでもなく大きな一歩です。またそのことは、同じ道具でも違う使い方がある事を教えてくれました。
 3.2 振動を手になじませる
 白杖と機械を持ち、交互に向けることを繰り返す。すると、白杖が床を突く振動と、機械が物体を感知する振動との、左右の手の違いが良く判ります。この違いを手になじませることが重要になります。これは例えばピアノ奏者でも、熟練しているからこそ、左右で違う旋律を同時に奏でられるのと似ています。
 3.3 いよいよ移動です。
 機械が充分に手になじんだら、五歩から十歩ほど前進と後退を繰り返し、さらに、機械を左右に振りながら同じ事を繰り返します。ここまでくると、不思議と、移動が苦にならなくなっています。そこで、自分の知っている場所を移動してみると、障害物を確認しながら普通に歩き回れるのです。しかも、白杖と機械との意識が自然に振り分けられてます。
 自由に移動できたときの喜びはひとしおで、世界にはこんなに便利な道具があったのかと驚きました。使えば使うほど、その経験年数によって、違う感覚も確実に磨かれました。1年で使いこなし、2年で体の一部に感じました。つまり、人と等しく成長するのです。そのことを理解したとき初めて、この本当の良さが実感できるのだと確信しました。

 4 役立つ例
 普段の移動はもちろん、並んだ列の後ろへ向けて、後退するのにも使える。やむを得ずに白杖が使えない場合に、代わりとして使うこともある。巻き尺として使ったり、大きな物、車や公園のオブジェや芸術品なども、触らずに、おおまかな形がわかった。指先で持つと、物体を指先で触れている感覚になる。この応用で、床に這わせて、何度も、落とし物を拾うこともできた。写真を撮るとき、被写体に向けたり、他にも、ゲームなど、面白い使い道を試している。

 5 まとめ
 初心者がパームソナーを習得していく過程を明らかにできた。
物体の有無や形を認識するためのもの、として使い始めることが重要だった。
初心者用の自習マニュアルの作成に役立てることができた。

 参考文献
1)PULSE DATA, New Zealand: mowat sensor Owners Manual, 1991
2)面高:電子機器を活用した歩行訓練、昭和60年、日本ライトハウス、135-179



トップページへ http://www.palmsonar.com/jp