耳による物の探知

 あらすじ
 物を探すには高い音がいい、しかし、高い音は聞こえにくい、すると、耳だけに頼ると問題、よって、確認する手段が必要、という流れです。

 高い音による探知
 コウモリは、超音波を断続的に出して、そのエコー(反響)を聞くソナー(sound navigation and ranging:音によるナビゲーションと距離計測)の仕組みで物を探知して、衝突しないようにナビゲーションしながら、目標の捕捉をします。
 超音波とは、人に聞こえないほど高い(周波数の)音です。高い音を使う理由は、高い周波数ほど波長が短いので、小さな物まで分かり、方向が良く分かり、短い時間で分かり、さらに、遠くまで届かないので余計な残響音が邪魔しないからです。

 高い音は聞こえにくい
 現代音響学(牧田康雄ほか、昭和52年)の本から、グラフを3つ紹介して、大事な所を解説します。
 構造的に、高い音は聞こえにくい。図1は規格のグラフですが、よく聞こえる音の周波数は4kHzくらいまでで、それより高い音は聞こえにくいことが分かります。原因は、耳の穴の中にある空気の1/4波長の共鳴現象です。たとえば4kHzの音の波長は85mm(毎秒340mの音速を周波数で割った商)なので、穴の深さは、波長の1/4の21mmくらいだと計算できます。
 年齢とともに、高い音の聴力が低下します。図2のグラフでは、たとえば4kHzの音は、20才に比べて60才では5倍(14dB)も聞こえにくくなり、さらに高い音の聴力ほど大きく低下することが分かります。病気や騒音で聴力が低下しても、まず高い音から聞こえにくくなるようです。
 マスキング現象というのがあって、低い(周波数の)妨害音によって、高い音が隠されます。編集した図3のグラフでは、たとえば、うるさいくらいの80dBの400Hzの妨害音によって、4kHzが聞ける音の下限が10倍は高くなります。これは、周波数を聞き分ける内耳の仕組みによるようです。
図1 音の大きさの等感曲線図2 年齢による高域感度の低下図3 純音によるマスキング

 耳による探知の問題
 小さい幅の(薄い、細い)障害物、たとえば突き出たトラックの荷台や放置自転車は探知しにくいです。探知できる幅の目安は1/4波長です。たとえば、波長85mmの音が聞こえるとすれば、21mmより大きな幅の障害物が探知できると見当がつきます。ただしそれは、条件がよくて、注意深く時間をかければです。
 低い音は遠くまで届くので、壁で反射してきた音を聞いて、方向や距離を勘違いする可能性があります。反射の壁となる電車が入れ変わっていく駅のホームでは、マスキング現象もあって、さらに複雑なことが考えられます。
 若い時に耳による探知がうまくても、年齢が高くなれば、それができなくなる可能性が考えられます。

 結論 耳による探知は有用ですが、確認する手段を持つことが必要だと考えます。



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